不動産を相続する場合の注意点!必要書類やどうやって進めるのか解説

不動産

不動産の相続には、さまざまな手続きや書類が必要です。

相続時には、親族間でトラブルが起こりやすく、遺産分割協議などの相続に関する話し合いは慎重に行う必要があります。

しかし、普段から相続についての知識がないと、次のような疑問を抱えるかもしれません。

「不動産を相続するにはどのような手続きが必要なのかわかりにくい」「相続税はいくらかかるのだろう?」。

そんな方のために、この記事では不動産を相続する手続きや必要な書類について詳しく説明します。

さらに、相続税の計算方法や相続税以外にかかる税金についても紹介します。

この記事を読むことで、相続全般に関して知識を深めることができ、相続時に起こりがちなトラブルを避ける方法を理解することができるでしょう。

不動産相続時の流れ・必要書類

ここでは、不動産相続時の手続きの流れや必要書類をご紹介していきます。

相続後に速やかに行う手続き

不動産相続の際には、相続が発生した後に迅速に行うべき手続きが数多く存在します。

それぞれの手続きについて、順に詳しく解説していきましょう。

遺言書の有無を確認

相続が発生した際に最初に行うべきことは、遺言書を確認することです。

遺言書が存在すれば、原則としてその中に記載されている内容に従って相続手続きが進められます。

遺言書は故人の明確な意思を示すものであり、たとえ遺産分割協議の後に発見されたとしても、遺言書の内容が優先されます。

ただし、以下の条件に該当する遺言書は、遺言書そのものが無効とされる可能性があるため、ご注意ください。

– 遺言書に日付が記載されていない場合 – 遺言書が故人以外の人間によって代筆された場合 – 遺言者の署名や押印がない場合 – 複数の人間によって共同で書かれた場合 遺言書の内容が有効か否かを判断するためには、弁護士など専門家に相談することが良いでしょう。

彼らは法律の専門知識に基づき、遺言書の解釈や法的な効力についてアドバイスをしてくれます。

法定相続人の確定

次に進む前に、法定相続人を明確にする必要があります。

なぜなら、相続人が確定しない限り、相続手続きを進めることができないからです。

法定相続人を特定するためには、亡くなった人の生まれてから亡くなるまでの戸籍の謄本を取得する必要があります。

遺産の分割協議などが行われた後で新たな相続人が見つかってしまうと、遺産の分割協議をやり直さなければなりません。

被相続人の財産や債務をリストアップ

相続人の特定が確定すると同時に、相続財産や債務の一覧を作成します。

具体的には、どの財産が相続の対象となるのかを特定するためです。

相続できる財産には、不動産だけでなく、現金や有価証券、貴金属などのプラスの資産だけでなく、住宅ローンなどのマイナスの資産も含まれます。

さらに、不動産が相続財産に含まれるかどうかを確認するためには、市町村から送られてくる固定資産税の納税通知書を確認します。

遺言書が無い場合は遺産分割協議を行う

もしも遺言書が行方不明であるか、存在しない場合には、相続人全員が遺産の分配について話し合います。

これを遺産分割協議と呼びます。

遺産分割協議では、財産の分配に関する具体的な内容について合意が得られた場合、不動産などの資産をそれぞれの相続人にどのように分けるかを明記した遺産分割協議書を作成します。

相続登記を行う

相続の際に、遺産の中で不動産を相続する人が決まった場合、相続登記を行う必要があります。

相続登記を行うと、登記簿に新しい所有者の情報が記載され、不動産の所有者が変わったことが公になります。

現在の法律では、相続登記は任意ですが、令和6年4月からは義務化されることになります。

義務化された後は、相続を通じて不動産の所有権を取得した相続人は、知った日から3年以内に相続登記を行わなければなりません。

したがって、遺産分割協議によって不動産を相続することが決まった相続人は、遺産分割協議が成立した日から3年以内に相続登記の申請をしなければなりません。

なお、正当な理由がないのに相続登記を怠った場合、10万円以下の過料が課される可能性があります。

相続開始の翌日から3ヶ月以内に行う手続き

相続開始翌日から3ヶ月以内に必要な手続きには、次のようなものがあります。

まず、相続放棄や限定承認の選択を行うことです。

相続対象の財産や債務について、相続放棄または限定承認をするかどうかは、相続開始の翌日から3ヶ月以内に決める必要があります。

もし相続放棄や限定承認を希望する場合は、期限内に家庭裁判所へ申述しなければなりません。

相続放棄とは、相続人が被相続人の財産や債務を一切受け入れないことを意味します。

被相続人の負債がプラスの財産を上回っている場合に行います。

一方、限定承認は、プラスの財産の範囲で負債を引き継ぐことを意味します。

相続開始の翌日から4ヶ月以内に行う手続き

相続が発生した日から4か月以内に、行わなければいけない手続きはいくつかあります。

その中でも重要なのが、相続人全員が被相続人の1月1日から死亡日までの期間に発生した所得について申告することです。

具体的には所得税の準確定申告です。

通常、所得税の申告期限は翌年の3月15日までですが、個人が亡くなった場合は、この期限までに手続きを完了させる必要があります。

つまり、相続開始の翌日から4ヶ月以内に所得税の準確定申告と納付を行うことが求められます。

この手続きは非常に重要なので、しっかりとした期限内に確実に行うようにしましょう。

相続開始の翌日から10ヶ月以内に行う手続き

相続が始まった翌日から10ヶ月以内には、次の手続きが必要です。

まず、相続税の申告と納付を行う必要があります。

通常は、この期限までに遺産分割協議が完了していることが望ましいです。

現金で相続税を納付する場合には、必ずこの期限までに納税しなければなりません。

もし延納や物納を行う場合でも、この期限までに申請書を提出する必要があります。

相続開始の翌日から1年以内に行う手続き

相続が始まってから1年以内に行わなければならない手続きには、以下のものがあります。

・遺留分侵害額請求:相続人、受遺者、受贈者に対して申し立てを行います。

遺留分侵害請求は、相続が始まってから1年以内に行うものです。

この請求は、遺言で決まった相続の割り当てが遺留分よりも少ない場合に、法定相続人が異議を申し立てることです。

相続人が遺留分を侵害した場合には、1年以内であれば遺留分侵害請求をすることができます。

ただし、兄弟姉妹には遺留分が存在しないことに注意してください。

相続開始の翌日から3年10ヶ月以内に行う手続き

相続開始の翌日から3年10ヶ月以内に行う手続きには、以下のものがあります。

まず、税務署に相続税や譲渡所得税の特例の利用を申告することが必要です。

「配偶者の税額軽減」や「小規模宅地の特例」の適用は、相続開始の翌日から10ヶ月以内に遺産分割協議が完了していることが条件となります。

しかし、時には相続人間の話し合いが難航し、遺産分割協議がまとまらずこれらの特例を適用することができない場合もあります。

このような場合は、「申告期限後3年以内の分割見込み書」を申告期限までに提出しておく必要があります。

その後、3年以内に遺産分割協議がまとまると、その時点で特例を利用して相続税の申告内容を修正することができます。

また、相続財産を譲渡した場合、譲渡所得税の計算で相続税額を取得費加算する特例も存在します。

この特例は、相続税の申告期限(相続開始の翌日から10ヶ月後)から3年以内で利用することができます。

つまり、3年10ヶ月以内に譲渡が行われる場合には、取得費加算の特例を受けることができるのです。

不動産を相続したときにかかる税金・費用

不動産を相続した際には、さまざまな税金や費用が発生します。

これらについて詳しく解説いたしますので、最後までご覧くださいませ。

相続税

相続の際には、相続税がかかります。

相続税は、相続財産から基礎控除分を差し引いた課税対象額に対して課税されるものであり、課税対象額がある場合は相続税を支払う必要があります。

ただし、一般的には相続税の方が税率が低いため、贈与税よりも節税効果が高いとされています。

また、相続税では評価額を抑えることができるため、不動産などの資産を相続することは、税負担の面でも節税になると考えられています。

一方、生前贈与には以下のメリットがあります。

まず、贈与を行うことで贈与者の資産を減らすことができ、相続時の節税効果を得ることが可能です。

また、受贈者の資産は増えるため、将来の経済的な安定や自己資本の形成に役立つことが期待されます。

さらに、贈与者は指定した人に直接資産を渡すことができるため、自分の意図する相続の形を実現することができます。

以上のように、相続税と生前贈与はそれぞれ特徴とメリットがあります。

お金や財産の管理においては、現在の状況や将来の計画を考慮し、最適な方法を選ぶことが重要です。

登録免許税

相続登記を行う際には、所有権の移転手続きに伴い、登録免許税が発生します。

この登録免許税は、土地や建物の固定資産税評価額に基づいて算出されます。

具体的な計算式は、固定資産税評価額に4/1000を掛けることです。

たとえば、固定資産税評価額が2,000万円の土地を相続した場合、登録免許税は計算式に従って8万円となります。

これは、固定資産税評価額2,000万円 × 4/1000 = 8万円と計算されることになります。

また、手続きを司法書士に依頼する場合、司法書士報酬も加算されます。

ただし、司法書士報酬は事務所によって異なり、一般的な相場は5万円から10万円程度と言われています。

したがって、登録免許税の他に、司法書士報酬も負担する必要があることになります。

固定資産税・都市計画税

固定資産税と都市計画税は、不動産の所有者に対して課税される税金です。

固定資産税は、不動産の評価額に基づいて計算されます。

具体的には、不動産の評価額に1.4%を掛けることで計算されます。

一方、都市計画税は、固定資産税評価額の0.3%という制限税率に基づいて計算されます。

これらの税金は、不動産の所有後に毎年課税されます。

不動産を相続するときの注意点

不動産を相続する時の注意点をご紹介していきます。

2024年4月1日以降相続登記は義務化

相続登記は、2024年4月からは必須の手続きとなります。

もし不動産を相続していても、相続登記をしなければ公的に所有者とみなされず、したがって本人ではないためにその不動産を売却することができません。

現在の段階では法的に義務ではありませんが、不動産を相続した場合には必ず相続登記を行うことをお勧めします。

これにより、所有権を正式に証明し、不動産の取引や所有に関する権利を保護することができます。

相続税の2割増しに注意

もし相続した不動産を、被相続人と血縁関係が一親等の血族や配偶者ではない人が取得した場合、相続税の支払い額は2割増しになります。

具体的な計算方法は次の通りです。

「2割増し後の相続税の計算方法」は、各相続人の税額控除前の相続税額に1.2をかけることです。

つまり、元々の相続税額に20%の増加が加えられることになります。

まとめ

相続するには、相続開始の翌日から10ヶ月以内に相続税を原則として現金で支払わなければなりません。

そのため、法定相続人が複数人いて、遺言書が存在しない場合には、迅速な遺産分割協議が必要です。

この時間制約のため、相続税が発生するかどうかや現金での支払いが可能かどうか、現金支払いが困難な場合には迅速に売却する必要があります。

また、売却するためには相続登記が必要であり、相続の手続きについて事前に理解しておくことが重要です。

なお、トラブルが起きないようにするためのコツは、遺産を平等に分割することです。

そのため、すべてを現金化する換価分割を選択することが望ましいです。

また、トラブルを回避するためには日頃から親族とのコミュニケーションを深めておくことも重要です。