贈与税は、自分の持っている現金や資産を他の人に与える際に生じる税金です。
特に親から子への贈与について考えている方は、贈与税に関する知識がないと、損をする可能性があります。
しかし、贈与税には非課税の特例も存在するため、うまく利用すれば高額な資産の贈与でも、贈与税の対象とならずに実行できることがあります。
今回は、親から子への贈与においては贈与税がかかる場合とかからない場合、さらに非課税の特例について詳しく説明します。
この記事を参考にすることで、贈与税についてより深く理解できるでしょう。
贈与税とは
贈与税は、個人が他の人から財産をもらった時に支払わなければならない税金のことです。
ただし、この税金は他人から受け取った場合だけでなく、親から子に財産を受け継いだ場合にもかかります。
一方で、法人から贈与された場合には所得税がかかるため、贈与税はかかりません。
また、贈与税の対象となるのは、一年間で受け取る贈与が110万円までの場合です。
ただし、110万円以上の贈与を受けた場合でも、具体的な状況によっては贈与税が免除されることがあります。
贈与税について深く理解していないと、税金を過剰に支払ったり、未払いになったりするリスクがあるため、注意が必要です。
親子間で贈与税がかからない4つのパターン
親と子の間で贈与する際には、特定の条件を満たすと贈与税がかからない場合があります。
具体的には、以下の4つのパターンがあります。
1. 贈与額が年間で110万円以下の場合は、贈与税がかかりません。
この場合、贈与額の合計が110万円を超えても課税対象にはなりません。
2. 教育費や生活費として贈与を受ける場合も、贈与税がかかりません。
親から子に対して、将来のために教育費や生活費として贈与する場合は、贈与税の対象外となります。
3. 出産費用や結婚費用として贈与を受ける場合も、贈与税がかかりません。
親から子への贈与であり、出産や結婚に伴う費用を助けるために行われる場合は、贈与税の対象外とされます。
4. 非課税制度を利用して贈与税がかからない場合もあります。
例えば、特定の非課税枠を利用して贈与を行う場合は、贈与税の対象外となることがあります。
年間110万円を超える贈与を検討している方は、上記の贈与税がかからないパターンを参考にして検討することをおすすめします。
贈与税を回避する方法を上手に活用することで、贈与をスムーズに進めることができます。
贈与額が年間で110万円を超えない場合
年間で贈与額が110万円以下の場合、現金や資産に関わらず贈与税はかかりません。
贈与税の非課税枠は年間で110万円と定められており、この範囲内であれば課税を受けることはありません。
贈与税は、毎年の1月1日から12月31日までに贈与を受けた金額で判断されます。
ただし、定期的な贈与を受けている場合には、年間贈与額が110万円以下でも贈与税が課税される可能性が高くなります。
定期贈与とは、一定期間にわたって同じ人から一定の金額が贈与されることを指します。
例えば、親が子供に毎年100万円を10年間渡しているケースでは、「初めから1,000万円の贈与意思がある」と判断されるためです。
そのため、定期的な贈与を行う場合には、贈与額や贈与する時期を変更することで、課税対象となる確率を下げることができます。
教育費や生活費として贈与を受けた場合
教育費や生活費を贈与として受ける場合、贈与税はかからないので安心です。
たとえば、子供が留学するための費用や家賃、光熱費などに使われる贈与も、税金の対象にはなりません。
親から子供へだけでなく、逆に子供から親への生活費の贈与も贈与税はかかりません。
親子間でお金をやり取りする際にも安心して利用することができます。
ただし、教育費や生活費として受けた贈与は、本来の目的以外に使用する場合は贈与税の対象となることに注意が必要です。
例えば、教育費として受けたお金を娯楽に使ってしまった場合には、税金がかかる可能性があります。
また、一度に大きな金額の贈与を受ける場合にも、課税の対象になる可能性があるため、注意が必要です。
贈与税の対象にはならない教育費や生活費の贈与を受ける際には、使用目的や金額に注意しながら利用しましょう。
税金に関するルールを守ることで、スムーズな贈与のやり取りができます。
出産費用や結婚費用として贈与を受けたケース
前述した教育費や生活費に加えて、出産費用や結婚費用についても贈与税の対象から外れる場合があります。
たとえば、結婚費用の場合、披露宴の費用などを親が負担する場合には贈与税はかかりません。
また、出産費用の場合には、検査や検診代、入院費などが親からの贈与として受け取られる場合にも贈与税の対象から外れます。
しかし、出産費用や結婚費用として贈与を受けた場合でも、それが本来の目的で使用されない場合には贈与税が課されてしまいますので、注意が必要です。
つまり、贈与を受けた出産費用は出産に関連する費用として使用される必要があり、同様に結婚費用も結婚に関連する費用として利用される必要があります。
贈与税の非課税措置は、教育費や生活費だけでなく、出産や結婚にかかる費用も含まれていますが、その非課税の対象となるためには、利用目的がしっかりと関連していることを念頭に置いて行動する必要があります。
非課税制度を利用して贈与税がかからない場合
日本の税法において、非課税制度を利用することで、贈与額が税金の対象にならず、贈与税を支払う必要がありません。
非課税制度は、特定の条件を満たしていれば、課税対象とされない制度です。
非課税制度を利用しない場合、贈与税の基礎控除額は「年間110万円まで」と定められています。
しかしながら、非課税制度を利用すれば、最大で2,500万円まで贈与を行っても贈与税がかかることはありません。
したがって、非課税制度が適用される人は、ぜひその制度を利用することをおすすめします。
親子間の贈与税を非課税にできる方法や制度
贈与を検討している方におすすめの非課税制度には、以下の3つがあります。
損をしないためにも、親子間での贈与を考えている方は、事前にしっかりと制度を理解しておくことが重要です。
一括贈与を利用
親が子供にお金を贈与する場合、結婚式や出産、学費などの目的であれば、一括贈与という方法を使うことで最大1,000万円まで税金をかからずに贈与することができます。
通常、結婚後の生活費の贈与は非課税の対象ではありませんが、社会的な通念に則り適切と認められる場合には、この非課税制度の対象となることがあります。
ただし、一括贈与をする場合には、金融機関やその他の営業所を通じて「資金非課税申告書」を提出する必要があります。
提出しないと、非課税の対象にはなりませんので、注意が必要です。
住宅取得資金贈与の非課税特例を利用
お子さんやお孫さんが住宅を購入する際に、贈与による資金援助を考えている場合、1,500万円までの贈与額は非課税となる制度があります。
さらに、所得税の基礎控除分と合わせて考えると、合計で1,610万円までの贈与は非課税となります。
住宅取得資金贈与の非課税特例は、非課税制度の中でも特に身近で利用しやすいものです。
ただし、条件として住宅の購入時に贈与されることが定められており、すでに購入済みの住宅のローン返済には利用することができません。
この点には注意が必要です。
相続時精算課税制度を利用する
相続時精算課税制度は、生前に贈与をする際に2,500万円までを非課税にできる制度です。
この制度の特徴は、税金の支払いを後回しにできることです。
「非課税なのに後回し?」と疑問に思うかもしれませんが、相続時精算課税制度を利用しても、相続した財産が永久に非課税になるわけではないのです。
例えば、相続時精算課税制度を利用して5,000万円を相続した場合、生前に贈与した2,500万円は税金がかかりません。
ただし、残りの2,500万円だけに税金がかかるわけではありません。
相続した方が亡くなった際には、生前に贈与した分も含めて5,000万円に対して税金がかかるのです。
ですから、相続時精算課税制度を利用する際には、税金の支払いが後回しになるだけであることを理解して利用しましょう。
また、住宅取得資金贈与の非課税特例は、非課税制度の中でも身近で利用しやすい特徴がありますが、条件として住宅を購入する際に贈与することが求められます。
したがって、既に購入済みの住宅のローン返済には利用することができませんので、注意が必要です。
親子間でも贈与税がかかるパターン
親子関係においても、贈与税は発生する場合があります。
贈与税は、贈与されたものによって課税されるかどうかが異なります。
贈与税が課税されるものには、現金以外の資産も含まれます。
つまり、不動産や株式、債券などの資産を贈与した場合も、贈与税がかかる可能性があるのです。
親子関係においても、特に注意が必要です。
現金が110万円を超えるケース
年間110万円を超える金額を親から受け取った場合、贈与税が課されます。
逆に、年間110万円までの贈与については、基本的な控除額内に含まれるため、贈与税はかかりません。
また、贈与税を考慮する際には、複数の人から贈与を受けた場合には注意が必要です。
複数の人から贈与を受けた場合、贈与した人数ではなく、贈与を受けた人数ごとに計算されます。
例えば、3人からそれぞれ100万円を受け取った場合、合計金額は300万円になりますが、基礎控除額は贈与を受けた人数によってもたらされるわけではありません。
つまり、合計で300万円の贈与を受けた場合は、贈与税がかかるということです。
生活費や教育費にそぐわない使途のケース
生活費や教育費などの特定の目的で贈与された場合でも、その目的にそぐわない形で利用されていた場合は、その贈与金額は課税対象となります。
たとえば、子供の留学費用や家賃、光熱費の支払いに使用する場合は、生活費や教育費として認められますが、有価証券への投資や保険料の支払いなど、明らかに異なる目的で資金を移動する場合は、その用途としては認められない可能性が高いです。
生活費や教育費として贈与金を受け取った場合は、必ずその目的に合った使い方をするように注意しましょう。
親から借りたお金を返していなかったケース
親子間でお金を貸し借りする場合、慎重になる必要があります。
「贈与」とは異なるため、特に気にする必要はないと思うかもしれませんが、もし親から借りたお金を返済していない場合、そのお金は贈与されたものと見なされ、贈与税の対象となる可能性があります。
ただし、合計金額が110万円以下の場合は贈与税はかかりません。
しかし、大きな金額の貸し借りが発生している場合には、注意が必要です。
親が所有している車や不動産をもらったケース
贈与税は、親が所有している車や不動産などの「財産」にも適用されます。
つまり、現金だけでなく、他の財産をもらった場合にも課税されることになります。
例えば、価値が110万円以上の車や不動産をもらった場合、贈与税が必要となります。
車や不動産の価値を算出するためには、不動産会社や買取会社、またはインターネット上の査定サービスに依頼することがおすすめです。
特に、車を売る場合はインターネット上で一括査定を依頼することで、最も安い価格を参考にすることができます。
これにより、110万円以下の価値で贈与することができるでしょう。
車や不動産を新しく買ってもらったケース
もし親から所有している車を贈与としてもらう場合と同じように、新しい車や不動産を贈与としてもらった場合も、贈与税がかかります。
ただし、購入費用が110万円以下の場合には贈与税はかからないため、贈与税の対象になりたくない方は、中古車を購入するなどして購入費用を110万円以下に抑えるように工夫してください。
しかし、不動産の場合、購入金額を110万円以下にすることは難しいかもしれません。
そこで、上記の記事を参考にして、できるだけ税金がかからない方法で工夫してみてください。
子供名義の住宅を親の費用で増築したケース
親が子供の名義で住宅を増築する場合でも、親が増築費用を負担することになるため、贈与税がかかります。
これは、増築費用が実質的に親から子供への贈与とみなされるためです。
また、住宅をリフォームする場合でも同様に贈与税がかかります。
もし増築部分の贈与税を避けたい場合は、親が増築部分の契約を引き受けることをおすすめします。
増築部分を親の名義にすることで、増築部分は親と子供の共有名義となり、贈与税はかからなくなります。
ただし、将来的に持分を移転する場合には、譲渡所得となる可能性があるため、注意が必要です。
親が負担した生命保険料を受け取ったケース
親が支払った生命保険料を子供が受け取る場合、贈与税が課されることがあります。
このような贈与税がかかる理由は、親が実質的に子供に生命保険料を贈与しているとみなされるからです。
贈与税がかかる生命保険料の計算方法は、受け取った死亡保険金の額から基礎控除額(110万円)を差し引いた金額が課税所得となります。
ただし、贈与税は死亡保険金に対してのみかかるものであり、怪我や病気によって受け取った保険金には贈与税はかかりませんので、注意が必要です。
親に借金を肩代わりしてもらったケース
親に代わって借金を肩代わりしてもらった場合、贈与税が課せられる可能性があります。
贈与税がかかる理由は、税法上で借金の肩代わりが贈与と見なされるからです。
具体的な金額は「いくら得をしたのか」によって計算されます。
また、親から借りたお金を返済しなかった場合にも贈与税がかかることになります。
家族間での取り決めで「返済しなくてもいい(債務免除)」という場合でも、法的には現金を贈与したこととみなされ、贈与税が課される可能性があるため、注意が必要です。
ただし、子供が返済できないほどの巨額の借金を背負った場合や、元々生活に困窮して返済が不可能な状態にある場合は、贈与税は免除されることがあります。
このような特殊な状況では、個別に詳しく調査される必要があります。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
贈与税は、親子間でお金や財産を贈る際にかかる税金のことです。
多くの方が、この贈与税について知識を持っていないため、知らず知らずのうちに未払いとなることがあります。
しかし、贈与税の知識を深めることで、非課税制度についても理解できるようになります。
それにより、税金を抑えた上で正しい方法で贈与を行うことができるのです。
もし親子間で贈与を検討している場合、今回解説した内容を参考にして、贈与税を少しでも安くする方法を見つけてください。
これにより、より良い贈与ができるでしょう。